史跡を巡る歴史の憧憬               川村一彦

『古事記が描く説話の憧憬』全61回(楽しい古事記) 5・国生みと神生みの説話

天野沼保耕お

『古事記が描く説話の憧憬』全61回(楽しい古事記)
5・国生みと神生みの説話
夫婦神の最後に現れたのが瑞穂(みずほ)の国の創設者こそイザナキ神・イザナミ神の二神である。
天上界の神々は、二人の神に下界を治めよと命じられた。
そこでイザナキ神とイザナミ神は天上界から下界を見下ろした。
下界はただ波が漂い、其の果ても見えず水平線は遥か向こうに霞の彼方に何も見えない。
二人の神は協力をして、天の浮橋に立って「天の沼(ぬま)矛(ほこ)」をコオロコオロとかき混ぜ引き上げると矛先からポタリポタリと塩の雫が垂れて出来た島が「オロゴロ島」で二神は出来た島に降り立ち「天の御柱」と広い「八尋(やひろ)殿(でん)」を建てた。
オロゴロ島で互いに体の違いを見て、一体になる事を提案し交合の儀式始めた。
イザナキ神はたくましく、イザナミ神はなまめかしく、イザナキ神とイザナミノ神夫婦の契りの儀式は「天(あま)の御柱(みはしら)」を中に巡り廻ることから始まった。
男のイザナギ神は左回りにて「あなにやし、えおとめを」女のイザナミ神は右回りで「あなにやし、えをとこを」と愛の言葉を交わし交合された。
そして国生みに取りかかられ、最初に生まれた子は淡道の穂の狭(さ)別(わけ)嶋(しま)を生み・次に伊豫(いよ)の二名嶋を生み・次に隠伎(いき)の三子の嶋を生み・次に筑紫(つくし)嶋(しま)を生み・伊(い)岐(き)嶋(しま)を生み・次に津嶋を生み・次に佐度嶋を生み・最後に大きな大倭(おおやまと)豊(とよ)秋(あき)津(つ)嶋を生まれた。全てイザナキ神とイザナミ神とが国生みに造られた島々は大小合わせ十四島であった。
国生みをされた後は、神生みに取り掛かられた。

最初に住居に関わる神々の七神を生まれた。
次に海・河口・風・霧・野・峡谷・迷い路・木など自然に関する神々と孫神を含め二十四神を生まれ、次に生産に関する神々を生み始めて三神目の火之迦(ひのか)具土(ぐつち)神(かみ)を生んだ時には難産で陰部に火傷を負ってしまった。
病床で苦しみながら嘔吐(おうと)や糞(ふん)や尿から穀物・鉱山・土・生成の神など八神の神々が生まれた。
 結果、イザナキ神とイザナミ神の間に生まれた島々は十四島、神々は三十五神が生まれたことになる。
イザナミ神は火傷がもとで病床に就き亡くなったしまった。イザナキ神は泣き悲しみ足元にすがったが、どうすること出来ず遺骸(いがい)を出雲国と伯伎(ほうき)国(くに)の境い目の比婆山(ひばやま)に葬った。
愛する妻を失ったイザナキ神の怒りは収まらずイザナキ神は十握の剣を抜き、「いとしい我妻よ、お前ひとりを引き換えに出来ようか」我子の迦(か)具土(ぐつち)を切ってしまわれた。
そして横たわる妻の枕もとに腹這いになって声を上げて泣かれた。
火之迦具土の体からは血が飛び散って、血液から八神が生まれ、頭部・胸部・右腕・左腕・腹部・右足・左足・陰部・十拳剣などから十八神々が生まれた。

★天上界の神々が地上に舞い降りる情景から天地の内の地上の創世が次始まる。
言わば天上界から力によって地上界が形成される構図になっている。
この点に於いて天上界は絶対的な支配者である。
その使者がイザナキ神・イザナミ神である。
最初にイザナキ・イザナミ神が天の浮橋から沼矛をかき混ぜ、その沼矛から滴り落ちた塩が積り固まった所が、オノゴロ島である。その島に天の御柱を立て八尋殿を建てた。
二人の神はイザナキ男神・イザナミ女神として交わり「交合」をして「国生み」を始め、瑞穂の国の創世として、淡路島・四国・次に隠岐の島・九州を生み、壱岐島・対馬を生み・佐渡島を生んで最後に本州を生んだ。
国生みと言う大役を終えて帰りに、吉備の児島、瀬戸内海の小豆島、次に大島、次に女島を、次に両児嶋を生まれた。
先に生まれた国生みの島々を大八嶋国と言う。後から生まれた児嶋は島で合計十四島の国生みがなされた。
次に神生みは、土石・石・砂・住居の出入り口・家屋・風・海・水・次に女神などからイザナキ神・イザナミ神の間に生れ神と、孫神十六神、合わせて三十四神生まれた。(記述には三十五神)
イザナミ神が火傷を負って死の間際に嘔吐や糞や尿などから鉱物・穀物など生産に関わる神々など合わせ十八神が生まれた。
万物創生に神々を生むにはイザナキ神・イザナミ神の夫婦神だけでは成り立たず、孫神などによって森羅万象の現象の神々を生めることになった。
こう言った生れた神々に役割を与え、存在理由と存在意味の大義名分を付けて出現させるには、大変な想像力が必要とさせるものである。
それぞれに配置が求められ、自然界に神として存在させる。
所がイザナキ神の出産で火の神、火之迦具土神を生んで火傷を負って死んでしまった。

☆国生み神生みの説話の場面はイザナキ神とイザナミ神の夫婦神によって、島々も神々も天地創造を展開していく。
森羅万象の神々を創出するには多岐にわたる壮大な偉業である。
そこには子神が神を産み、イザナキ神とイザナミ神を助けて行く。
その構成には緻密でなければならない。
説話の中でイザナミ神が火の神を生んで陰部に火傷を負って死んでしまう、想定すらできない火の神の出産、神が死ぬ、人間と同じように死後の世界がある。
黄泉の国がそれで、心憎い設定である。

●伊邪那岐・伊邪那美の神生み
◎伊邪那(いざな)岐(ぎ)神(かみ)◎伊邪那(いざな)美(み)神(かみ)の国生みを経て、二神は更に神生みに取り掛かった。
◇大事(おおこと)忍男(おしおの)神(かみ)◇石(いわ)土毘(つび)古神(こかみ)◇石(いわ)巣比売(すひめ)神(かみ)◇大戸(おおと)日(ひ)別(わけ)神(かみ)◇天之吹男(あまのふきおとこ)神(かみ)を生み、次に◇大屋毗(おおやび)古神(こかみ)◇風(かざ)木津別之(もつわけ)忍男(おしおの)神(かみ)。
次に海の神◇大綿津(おおわたつ)見(み)神(かみ)・
次は河の神、◇速(はや)秋津(あきつ)日子(ひこ)神(かみ)◇妹速秋津比売(いもはやあきつひめ)神(かみ)この
◎二神ハヤアキツヒコノ・イモハヤアキチヒメノ、より海、川を司る八神が生まれる。
◇沫那(あわな)芸(ぎ)神(かみ)◇沫那(つらなぎ)美(み)神(かみ)◇頻那(つらな)芸(ぎ)神(かみ)◇頬那(つらな)美(み)神(かみ)◇天之水分神◇国之水分(くにのみずくまりの)神(かみ)◇天之久比奢母(あめのきくひざもての)智(ち)神(かみ)◇国之久比奢母(くにのひざもじの)智(ちの)神(かみ)の神々を生んだ。
次に風の神、◇志那(しな)都比(つひ)古神(こかみ)・木の神、◇久久(くく)能(のう)智(ち)神(かみ)・山の神、◇大山津(おおやまつ)見(み)神(かみ)・野の神、◇鹿屋野比売(かやのひめ)神(かみ)が生まれた。
○オオヤマツツミ神とカヤノヒメ神との二神の間に八神が生まれた。
◇天之狭土(まえのさずち)神(かみ)◇国之狭土(くにのさづち)神(かみ)◇天之(あまの)狭霧(さきり)神(かみ)◇国之(くにの)狭霧(さきり)神(かみ)
◇天之(あまの)闇(くら)戸(と)神(かみ)◇国之(くにの)闇(くら)戸(と)神(かみ)◇大戸(おおと)或子(とまとひ)神(かみ)◇大戸(おおと)或(まとひ)女神(めがみ)の八神を生んだ。
◇次にイザナキ命とイザナミ命の間に三神を生んだ。
◇鳥之(とりの)石(いは)楠(く)船(ふね)神(かみ)◇大冝都比売(おおげつめ)神(かみ)○次に生んだ神が『古事記』の重要な役割と物語に大きく影響する存在となる。
◇火之夜芸速男(ひのはやぎはやお)神(かみ)またの名を火之迦(ひのか)具土(ぐつち)神(かみ)が生まれた。
◇火之迦(ひのか)具土(ぐつち)神(かみ)=『記紀』イザナキ神・イザナミ神の間に生まれた神であるが、誕生の際、火の神の為に火傷を負わせて焼死させ、父に斬り殺される。
◇イザナミ命がヒノカグツチ神を生んで、火傷を負って病み六神を生んだ。
病の中、嘔吐(おうと)から二神◇金山毗(かなやまび)古神(こかみ)◇金山毗売(かなやまびめ)神(かみ)が生まれた。
次に糞から生まれた二神◇波(はに)迹夜湏毗(やすすびこ)古神(こかみ)◇波(なに)迹夜湏毗売(やすびめ)神(かみ)次に尿から生まれた二神は◇弥都波能売(みつはのめ)神(かみ)◇和久産(わくむ)巣(す)日(ひ)神(かみ)が生まれ、ワクムスヒ神から◇豊宇気毗売(とようけびめ)神(かみ)が生まれた。イザナミ命がヒノカグツチ神を生んで病んで生まれた神々は七神生まれた。
◇イザナキ神とイザナミ神の間に生まれた神は孫神を含め、住居に関する神々が七神が生まれ、自然現象に関係する神々が二十三神生まれ、生産の関する神々の十神が生まれた。
これらの神以外に森羅万象を司る神々が鉱山や食料、山道、霧や峡谷、泡、凪さ波、水面など多彩にわたって生まれている。尿、糞、嘔吐などは農業に関係する神々の誕生になっている。
◇火の神については火鑚臼と火鑚杵があって、火鑚臼は女性の陰部を表し、火鑚杵は男性の男根を表している。
◇火神迦(か)具土(ぐつち)神(かみ)とイザナミ命の死
「愛しき我がなに妹の命を子の一木に易へむと謂ふや」(愛しい我が妻よ、お前の子一匹など引き換えにできようか)イザナミ神が横たわる遺体の枕もとを腹這いに大声で泣いて悲しみ、その涙で奈良香久山畝傍の木本に鎮座する神、泣沢女神である。
イザナミ命は火神迦具土神(かみ)を生んだ時に陰部に火傷を負い、病床のなか七神を生みやがて死んでしまう。
イザナキ命は嘆き悲しみ、イザナミ命の遺体を出雲の国と伯耆国の境界にある、比婆の山に葬った。
火神カグツチ神の出産で死んだ怒りは、カグツチ神に向けられ、イザナキ命は十拳の剣でその子カグツチ神の頸を切り捨てた。
◎すると剣先に着いた血が飛び散り、岩のなどに神聖な血がかかり、
その血液から◇石(いわ)折(さく)神(かみ)・◇根(ね)草(くさ)神(かみ)・◇石筒之男(いしはつつのおとこ)神(かみ)の三神が生まれた。
◎次に剣の本に着いた血液から◇甕速(みかやはや)日(ひ)神(かみ)・◇樋速日神・◇建御雷之男(たけみかづちのおとこ)神(かみ)の三神が生まれた。
◎剣の手上に付着した血液から◇闇淤(くらお)加美(かみ)神(かみ)・◇闇淤津羽(くらおつみ)神(かみ)が生まれた。
血液から生まれた神々は八神生まれた。
◎次に体の部分から生まれた神は、頭より生まれた神は◇正鹿山津見神次に胸から生まれた神は◇
淤(おど)勝山津(かつやまつ)見(み)神(かみ)次に腹か生まれた神は◇奥山津(おくやまつ)見(み)神(かみ)・次に陰(ほと)から生まれた神は闇山津(やみやまつ)見(み)神(かみ)・次に左手から生まれた神は◇志(し)芸山津(ぎやまつ)見(み)神(かみ)・次に右手から生まれた神は◇羽山津(はやまつ)美(み)神(かみ)・次に左足から生まれた神は◇原山津(はらやまつ)美(み)神(かみ)・次に右足から生まれた神は◇戸山津(とやまつ)美(み)神(かみ)まで八神が生まれた。
◎カグツチ神の遺体から生まれた神々は血液から八神、体の部分から生まれた神々は八神で一六神が生まれた。またカグツチ神が切られた剣の名は天之尾羽張という。
◎イザナキ命とイザナミ命の神生みで、火神カグツチ神の出産は深読みすれば、古代創世記に氏族、部族の内部紛争、国内の反乱があった挿入話かもしれない。※歴史をたどれば、時代に生きた、先人の喜怒哀楽の生きざまが見えてくる。



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Author:侏儒のつぶやき
趣味歴史。歴史研究会に参加。フェイスブック「史跡探訪と歴史の調べの会」管理。
著書多数。歴研出版より「平安僧兵奮戦記」自費出版「古事記が語る古代の世界」「古事記が描く説話の憧憬」『芭蕉紀行世情今昔』他多数。

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