史跡を巡る歴史の憧憬               川村一彦

『社寺神仏豆知識』45・馬頭観音(ばとうかんのん / めづかんのん、梵、ハヤグリーヴァ)は、仏教における信仰対象である菩薩の一尊。

 馬頭間ン1馬頭2『社寺神仏豆知識』45・馬頭観音(ばとうかんのん / めづかんのん、、ハヤグリーヴァ)は、仏教における信仰対象である菩薩の一尊。観音菩薩の変化身(へんげしん)の1つであり、いわゆる「六観音」の一尊にも数えられている。柔和相と憤怒相の二つの相をもち、日本では柔和相の姿はあまり知られておらず作例も少ない。そのため、観音としては珍しい忿怒の姿をとるとも言われ、通例として憤怒相の姿に対しても観音と呼ぶことが多いが、密教では、憤怒相の姿を区別して馬頭明王とも呼び、『大妙金剛経』に説かれる「八大明王」の一尊にも数える。梵名のハヤグリーヴァは「馬の首」の意である。これはヒンドゥー教では最高神ヴィシュヌの異名でもあり、馬頭観音の成立におけるその影響が指摘されている。 他にも「馬頭観音菩薩」、「馬頭観世音菩薩」、「馬頭明王」、「大持力明王」など様々な呼称がある。衆生の無智・煩悩を排除し、諸悪を毀壊する菩薩である。「師子無畏観音」ともいう。他の観音が女性的で穏やかな表情で表されるのに対し、一般に馬頭観音のみは目尻を吊り上げ、怒髪天を衝き、牙を剥き出した憤怒(ふんぬ)相である。このため、密教では「馬頭明王」と呼ばれて仏の五部で蓮華部の教令輪身(きょうりょうりんじん)であり、すべての観音の憤怒身ともされる[2]。それゆえ柔和相の観音の菩薩部ではなく、憤怒相の守護尊として明王(みょうおう)部に分類されることもある。また「馬頭」という名称から、民間信仰では馬の守護仏としても祀られる。さらには、馬のみならずあらゆる畜生類を救う観音ともされていて、『六字経』を典拠とし、呪詛を鎮めて六道輪廻の衆生を救済するとも言われる「六観音」においては、畜生道を化益する観音とされる。柔和相として、『理趣経』の第四段と、『理趣釈経』に説かれる観音の成仏相である「得自性清浄法性如来[3]が当てられる。馬頭観音の柔和相は『覚禅鈔』に初出して、四面二臂の異相の馬頭観音であり、この姿は『陀羅尼集経』に説くところと一致している。いわゆる柔和相の馬頭観音として有名なものには福井県中山寺の「馬頭観音像」(三面八臂)や、滋賀県横山神社の「馬頭観音立像」(三面八臂)があり、憤怒相と柔和相の両面を持つものとしては栃木県日光市輪王寺の「馬頭観音像」(三面八臂)も知られている。神奈川県岩流瀬(がらせ)の「赤観音」の石仏は、一面二臂の柔和相の馬頭観音であり、また、福島県古殿町松川の石仏は、三面八臂の憤怒相でありながら「赤観音」の名で知られている。異相として、千葉県多古町蓮華堂の「馬頭観音像」は、化仏としての阿弥陀仏を頭上に戴き、馬頭はなく、一面八臂の柔和相で白馬に乗った「赤観音」である。馬頭観音の石仏については、馬頭の名称から身近な生活の中の「」に結び付けられ、近世以降、民間の信仰に支えられて数多くのものが残されている。また、それらは「山の神」や「駒形神社」、「金精様」とも結びついて、日本独自の馬頭観音への信仰や造形を生み出した。経典によっては馬頭人身の像容等も説かれ、胎蔵界曼荼羅にも描かれるが、日本での仏像の造形例はほとんどない。立像が多いが、坐像も散見される。頭上に馬頭を戴き、胸前では馬の口を模した「根本馬口印」という印相を示す。剣や斧、棒などを持ち、また、蓮華のつぼみを持つ例もある。剣は八本の腕のある像に多い。石川県・豊財院の木造立像や、福井県・馬居寺(まごじ)の木造坐像は平安時代の後半にまで遡る作例である。また、福岡・観世音寺の木造立像は高さ5メートルに及ぶ大作で、日本の馬頭観音像の代表例と言える。京都・浄瑠璃寺の木造立像は、鎌倉時代の南都仏師らの手になる作例である。チベット密教のニンマ派では『八大ヘールカ法』の「パドマ・スン」、一般には「タムディン」、「ペマ・ワンチェン」。中国密教では「馬頭金剛」、「大持力金剛」と呼ばれる。柔和相は「赤観音」と呼ばれ、チベット密教や中国密教では、「ブンガ・ディオ観音」、「ブンガ・マティ観音」や、「大悲生海赤観音」、「大悲生海観音」、「紅観音」とも呼ばれる。「赤観音」は、その母尊として「蓮華部母」や「蓮華空行母」を伴う。チベット密教では一面四臂の赤い姿でヤブユムであり、ネパール密教では一面二臂の単尊が一般的で、中国密教ではその両方が有名である。ネパールでは「赤観音」は建国にかかわる重要な尊格であり、カトマンドゥ盆地でもっとも有名なお祭りの一つに『バタンの山車祭り』というのがあり、「ラト・マチェンドラ・ナート」と呼ばれて、マチェンドラ・ナート寺院に祀られた「赤観音」が、4月に始まり6月までの約2ヶ月間掛けてカトマンドゥ盆地を隅々まで練り歩き、仏教徒のみならず、ヒンドゥー教徒にも人気のお祭りとなっている。像容は前述のような忿怒相がよく知られていて、体色は赤、頭上に白い色の馬の頭である「白馬頭」や、緑色の馬の頭である「碧馬頭」(あおばとう)を戴き、三面三目八臂とする像が多い。チベット密教では一面二臂で赤い姿の憤怒相が一般的で、密教では他に一面四臂、三面二臂、三面六臂、三面八臂、四面二臂、四面八臂の像容も存在する。柔和相である赤観音は、チベット密教では一面二臂か一面四臂が普通であるが、中国密教では多面多臂の赤観音がある。台湾の国立故宮博物院に所蔵されている宋代大理国で張勝温により描かれた『梵像圖』の「六臂観音」と、その『梵像圖』を基に、清代に国師・章嘉呼圖克圖の監修のもと、丁観鵬によって描かれた『法界源流圖』にある「六臂観音」は三面六臂で、中央の顔が柔和相で左右の二面が憤怒相となっており、化仏は阿弥陀仏を戴いている。※歴史の学ぶ 先人の教訓と智恵。

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Author:侏儒のつぶやき
趣味歴史。歴史研究会に参加。フェイスブック「史跡探訪と歴史の調べの会」管理。
著書多数。歴研出版より「平安僧兵奮戦記」自費出版「古事記が語る古代の世界」「古事記が描く説話の憧憬」『芭蕉紀行世情今昔』他多数。

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